こんにちは、Angler Ogiです。
魅力的なトンボの世界においてもエース格と呼べるヤンマ科ですが、その中でも特に人気があるのが、当ブログに何度か登場しているマルタンヤンマです。
今回の記事では、最盛期に入ったであろうマルタンヤンマにスポットを当て、個人的主観や経験を踏まえて、詳しくご紹介したいと思います!
私がトンボ活動を始めたときから、バイブルは「近畿のトンボ図鑑」と、A先生によるHP「神戸のトンボ」でした。当サイトを見て、トンボに興味を持ってくださる方が増えたらいいなぁ、と思っています!
マルタンヤンマとは
幾度となくこのブログでもご紹介している、言わずと知れた超人気トンボ。
このトンボに人生を狂わされた、というトンボ家の方も数知れず。素晴らしい魅力を持ったトンボです。
雄の複眼は息を呑むようなコバルトブルーをしており、胸部にも同色のラインが入ります。
腹部は全体的に黒っぽい印象で、翅は基本的に透明。ですが、老熟個体になると褐色の翅をもった個体にも出会うことが出来ます。
一方、雌は複眼が鶯色っぽい色をしており、胸部は鮮やかな浅葱色になります。
腹部は枯れ枝色の個体が多く(赤褐色や黒っぽいものも)、翅は若いころから褐色が強め。
雄の鮮やかさとはまた違った、渋めの魅力があります。
マルタンヤンマの生態
体長は約73mm~82mm程度と、ヤンマの中では平均的なサイズですが、シルエットがほっそりしているため、ヤンマの中ではやや小ぶりに見えます。
近畿地方では6月半ばから発生が始まり、7月の梅雨明け前後が最盛期。幼虫期が300日程度ある、典型的な1年1世代型のトンボです。
羽化は夜間(真夜中)に行われることが多いので、野生での羽化シーンに遭遇することはほぼないのではないでしょうか。
そのため、未成熟個体を確認するなら、ヤゴを飼育して羽化シーンを目撃する他ありません。
成虫はその年の気温にもよりますが、7~8月中は安定してみる事が出来、稀に10月に入ってからも見かけることがあります。
基本的には水生植物が豊富な池や沼、湿地を好むトンボですが、限定的な時間でしか観察をすることが出来ない為、生態を理解していないと捕獲や観察が難しいトンボです。
雌を観察するには
雌は7月頭から産卵活動を行うため、このタイミングが最も観察しやすいタイミングだと思われます。個人的には7月末~8月のお盆頃までが、特に遭遇率が高いです。
ガマやカンガレイといった抽水植物のある湿地を好む印象で、周囲が山に囲まれている条件であれば、可能性はぐっと高まります。
また、上記の条件さえ整っていっれば、平地の池~意外と高標高の場所(1000m近い山中の湿地)にも来ていることが、今までの観察で判っています。
観察できる時刻は、早朝と黄昏時の少し前。
7~8月の早朝なら夜明け直後に活発にやってきますし、夕方17時半~18時40分頃も狙い目。
天候は晴れている時の方がいいかと思いきや曇りでも普通に産卵にやってくるので、良いポイントを見つけたら、早朝か夕方に通い続けるのがオススメです。
また、ごくまれに休止場所が見つかることがあります。
休止する時間帯は、日中の11時~14時頃。特に暑さの厳しい13時ごろが狙い目です。
雄の休止場所とはやや違う場所に固まっていることが多く、湿地脇の、風通りの良い林の入り口付近等がポイントになりやすい、と親友Takaは話していました。
休止と産卵時以外では、やはり黄昏飛翔を観察するのも面白いところ。
タイミングが合えば、右側の写真のようにカメラのストロボが届く高さ(7m程度)までは降りてきますし、捕獲できる高さまで降りてくる事もしばしば。
マルタンヤンマ雌の見た目上の特徴として褐色の翅が挙げられますが、上空を飛んでいる時もこの翅は非常に目立つので、見つけやすいかと思います。
雄を観察するには
多くのトンボファンが、雄の観察に苦戦しておられます。
というのも、マルタンヤンマ雄の休止場所は雌以上に見つけにくく、私も岡山の友人に教えて頂いたポイントを知っているのみ。
その場所の条件は、
- 山の中で道路に面していて、山自体は日当たりが良い(そこそこ標高がある)
- 休止している場所はカーブの膨らんだ所で斜面になっている
- 風が抜けやすく、周囲より涼しい
- 真昼間の間、ずっと日陰になる
- すぐ近くに産卵できる湿地がある(過去にヤゴを確認)
これくらいしかわかっていません。(苦笑)
この条件のポイントで、かつ過去に多数のマルタンヤンマ雄を確認できた日は、軒並みカラッとした晴天&最高気温が35度を超えていました。
個人的には、気温が高い日に条件の整った休止場所を探すのが良いのではないかと考えています。
また、黄昏飛翔時に捕獲したこともあるので、黄昏飛翔が多くみられるポイントを見つけておき、その場所で粘るのも良いかもしれません。
親友Taka曰く、黄昏時よりも早朝の方が雄を捕獲しやすいという情報もあるので、早朝と黄昏時、両方で狙ってみたいところ。
黄昏ポイントとなるのは(私の経験上)、
- 山に囲まれているが、上空がポッカリ開けたところ
- 近くに水場(湿地や沼)があり、湿度が高い
- 夕方になると無数の蚊柱が立つ
- 谷津田状態になった場所は特に良い
このような感じでしょうか。雌と違ってあまり低い所は飛ばず、かなり高い所をよく飛んでいる感じです。
シルエットがヤブヤンマなどと違い明らかに一回り小さいので、比較的わかりやすいと思います。
普段飛んでいる場所が本当に高い場所のため、まともに撮れた黄昏飛翔の写真が無かったのが悔やまれます・・・。撮影出来たら更新します!
黄昏時の、他のヤンマとの違い
黄昏時によく見かけるトンボの代表格として、ヤブヤンマとネアカヨシヤンマが挙げられます。
ネアカヨシヤンマは貴重種の為見かける機会は少ないかと思いますが、ヤブヤンマはあちこちで見かける普通種。
ここでは、この3種の見分け方について迫ってみます。
黄昏時のヤブヤンマ
最初の頃は、黄昏個体をガムシャラに狙っており、マルタンヤンマだと思って捕獲したらヤブヤンマだった、という事もしばしばありました。
ヤブヤンマは全長が約80~92mmと少し大型で、シルエットでは頭が比較的小さく見えます。
また、雌を下から突き上げるように追尾して飛ぶことも多いので、慣れると見わけられるようになります。
雌はずんぐりとしている上、このように尻尾の先端を折り曲げて飛ぶ姿が多く見受けられます。
また、雌雄ともに後翅をバタつかせて飛ぶのが大きな特徴なので、大きめ且つ後翅がバタ付いていれば、ヤブヤンマで間違いありません。
黄昏時のネアカヨシヤンマ
ネアカヨシヤンマの産地には大抵マルタンヤンマも棲息しています。
そのため、ネアカヨシヤンマ狙いで訪れたらマルタンヤンマを見かけた、なんて事はよくあります。
こちらが、黄昏飛翔時のネアカヨシヤンマのシルエット。
感じで書くと根赤葦と書くように、翅の付け根がやや赤褐色になっており、さらに翅の先端はやや色づいています。
翅全体が褐色になった個体もたまに見かけますが、基本的には翅の付け根と先端付近の色が濃いのが、大きな特徴でしょうか。
さらに飛び方。す~~~~っと旋回するように飛んでいる事が多く、(上写真のように)翅をバタつかせることが非常に少ないトンボです。
イメージ的には、アニメなどに出てくる幽霊のような感じ、というのが一番しっくりきます。
ネアカのサイズは約77mm~91mmと、こちらも大型なため、やや小ぶりなマルタンヤンマと見分けがつきます。
この写真、一番右端だけ普通種のギンヤンマです。
翅の褐色の入り方、ボディシェイプなど、どの部分を見ても明らかな違いがあるので、こちらも慣れると簡単に見分けられるかと思います。
ギンヤンマは胸部が大きくガッチリしていて、翅の褐色が中央部にしか入らない個体が多いです。さらに胸部と腹部の間が細くくびれているように見え、飛び方は直線的という特徴があります。
↓ギンヤンマについての記事はこちら!↓
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回はマルタンヤンマにスポットを当て、様々な面から個人的見解を書いてみました。
まだまだ私自身トンボを研究中の身なので、今後も新しい情報を入手次第、どんどん更新していこうと思います!
マルタンヤンマはじめ、トンボたちは生きてこそ輝く生き物です。
私は標本否定派ではありませんが、もしマルタンヤンマを捕獲することが出来たら、観察の後優しくリリースしてあげてくださいね。
きっと翌年も、同じ場所でマルタンを見ることが出来るはずです。
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