こんにちは、ギター講師のAngler Ogiです。
皆さまは、「ハーフコード」という言葉をご存知でしょうか。
ハーフコードはその名の通り、ギターの3本の弦を使用して鳴らすコードのこと。上手く活用することにより、
- コードカッティングのバリエーションが一気に広がる
- ハーフコードポジションを利用し、単音カッティングやアドリブに応用できる
- 歌の伴奏でオブリガードに応用できる
このような効果が期待できる、実に魅力的なコードなのです!
今回の記事は、我々ギターを生業とする人たちの間で俗称として使用されているハーフコードの魅力・使い方について迫ってみようと思います。
↓今回の記事はこんな内容です↓
- ハーフコード(カッティングコード)って何?徹底解説!
- 3本の弦を使用するハーフコードのフォーム24種を表(ダイアグラム)にしてご紹介!
- コードの成り立ちや音の働きなどを紹介している、中級者の方向けの記事です。
- コードカッティング、フレージング、メロ弾き(アドリブ)時、実際にハーフコードを使用するための方法に迫ります!
そもそもハーフコードって?
ハーフコードを考える前に、まずは通常のコードの成り立ち(ギター編)を考えなければなりません。
コード(和音)というのは、通常構成される音の数が3音~4音。
通常はルート音(主音・根音。ドミソで言うドの音)をベースとして、3度の音(性格音)は必須。
そこに5度の音や6、7度といった装飾的な音を追加することで成立しています。
- 例①:コードC・・・ド(主音)ミ(3度/性格音)ソ(5度)
- 例②:コードCm7・・・ド(主音)ミ♭(3度/性格音)ソ(5度)シ♭(セブンス)
- 例③:コードC△7(9)・・・ ド(主音)ミ(3度/性格音)ソ(5度) シ(△7の音)レ(ナインス)
こういったコードの中には、テンションノートと呼ばれる、働きには大勢を及ぼさない音が複数含まれることもあります。
通常ギターでは、これらの音を4~6本の弦を使用して音を奏でており、その際重複する音が1~3音ある場合が多いです。
例えば、C(ドミソ)のコードフォーム。↓

この場合6弦をミュートして鳴らすと、5弦からド、ミ、ソ、ド、ミ、という音の並びとなり、ドとミの音は高さを変えて2音分鳴っていることになります。
もしも6弦から鳴らした場合は(その場合はC/Eというコードになる)、ミの音が追加され、結果としてミが3音分なることになるのです。
ハーフコードの構成
今回ご紹介するハーフコードはその名の通り、使用する弦の数がハーフ(3本)になるのが最大の特徴。
4声、5声のコード(C△7等)を表現する場合は弦の数が足りませんが、バンド内で演奏する際は、複数の楽器で1つのコードを作り上げるもの。
そう、バンド内ではギターだけでコードを成立させなくても良い、ということなのです!
例えばC△7の場合、必要な音はド、ミ、ソ、シの4つ。
もしもベーシストがドの音を鳴らしたとすれば、ギタリストはミ、ソ、シの3音を鳴らせば、バンドとしてC△7が成立。
さらに、キーボーディストがシの音をストリングス等で鳴らしていれば、あと必要な音はミとソの2音だけとなる、といった状況も考えられます。
勿論、音を重複させてはいけないというわけではないので、全体のサウンドがモコモコしてしまわない程度に、コードフォームを作り上げていく必要があります。
ハーフコードはどんな時に使用する??
先に挙げたような特徴があるハーフコード。
実際のプレイングで使用する可能性が高いのは、ざっくり考えると・・・
- コードカッティング時
- 歌の伴奏の時のオブリガード
- アドリブの時の音飛びやスケーリング
この3点になります。
順番に見ていきましょう。
1,コードカッティング
カッティングは、ハーフコードの特性を最も活用できる手法の一つです。
そもそもコードカッティングというのは、コードを鳴らすという全体の響きを厚くする目的以外に、ドラム・ベースに次ぐ第三のリズム楽器という側面も持ち合わせています。
カッティングの名手であった師匠曰く、基本的なカッティングで使用する弦は殆どのケースで4本以下(4弦以下)。
特にハーフコードを利用した3本や2本弦のカッティング、またはハーフコード内の1本の弦を使用した単音カッティングが非常に面白い、と教えてくださいました。
コード楽器でありながらリズム楽器である側面を考えると、音(音程)の数は必要最小限としながらも、適度にコード感のあるサウンドが求められるのです。
今回の記事のメインコンテンツとして書いております。
2,ボーカルのバックでオブリガード
もしボーカリストがアコギやエレキの弾語りでコードストロークをしている際、横でエレキギターが同じようにコードストロークをしてしまうと、かなりモコモコしたサウンドになります。
そういった時、ハーフコードなら音数が少ない上、フォームの特性上必然的にハイポジションになるため、音域を被らせてしまうことなく、音の幅を広げることが可能となります。
また、1本ずつ弾けばアルペジオっぽいフレーズに。
複数の弦をリズムに乗せて鳴らせば、カッティング系フレーズに(後述します)。
1本ずつ弾いた後に、周辺にあるスケールポジションにリズミカルに移行すれば、メロ弾きっぽくなります。

バンドスコアのエレキギターパートをよく見て頂くと、今回ご紹介しているハーフコードのフォームから派生したであろうフレーズが多数出てきます!是非探してみてくださいね。
3,アドリブでの単音弾き
スケールのポジションを覚えて、自由に演奏をしていくアドリブ。
その際に、初心者の頃はどうしてもすぐ隣のポジションに移動してしまいがちになります。
そこで、ハーフコードのポジションを覚えておき、スケールに含まれているハーフコードを1本ずつ移動することで、隣り合わないポジションに自然と移動できます。
また、コードを分解して引く形になるためにコードトーンにあったスケーリングとなり、サウンドを厚めに保つことが出来るので、3ピースバンドなどで重宝されます。
さらに、単音弾きからのカッティングソロにも移行しやすいという特徴もあるので、バリエーションを増やす事にも長けている、と言えます。
コードフォームを一挙ご紹介!
それでは、実際によく使われるハーフコードのポジションを見ていきましょう!
使用頻度を以下のように★の数で表してみましたので、まずは星の数が多いフォームから練習してみてくださいね。
- ★・・・ほとんど見かけない。特定のコードの時やフレーズ内で見かける程度。
- ★★・・・たまに見かける。使い方は頑張って覚えたい。
- ★★★・・・目にする機会は多いが、使い方は少しコツがいる。
- ★★★★・・・★5よりは少ないものの、よく見かける。
- ★★★★★・・・非常によく見かける上、使い勝手がいい。
☆4弦ルートフォーム
4弦をルートとするフォームは、11種類あります。
ご紹介している「メジャー」や「マイナー」等は、「そのコードの時によく使用する」という意味合いであり、構成音が近い別のコードでも応用できるのがポイント。
併せてご紹介していきます!
メジャーコード

非常によく見かける、人さし指セーハで鳴らす事が多いフォーム(別名Aフォーム)です。
5フレットで考えると、音の並びは4弦=ソ・3弦=ド・2弦=ミとなり、その場合コードCの5度・主音・3度という並びになります。
そこで、5フレットの場合はキー=Cの1度と捉え、F△7(9)(4度メジャー)や Am7(6度マイナー)や等、構成音にドミソが含まれるコードなら全て使用できる、と考えます。

こちらもよく見かけるフォームで、2弦=中、3弦=人、4弦=薬で押さえます。
2度マイナー、4度メジャー(または1度メジャー、6度マイナー)でよく使用します。

3つ目のこちらもよく見かけるフォーム。2弦=人、3弦=中、4弦=薬で押さえます。
5~7フレットで考えた場合の構成音は4弦=ラ、3弦=ド♯、2弦=ミ。
そのため、キー=Cとして考えるのではなく、キー=Aの1度メジャーとして考え、その場合に4度メジャー、6度マイナーとしても使用できます。
セブンス

バレーコードの5弦ルートセブンスフォームから、5弦を取り除いたフォームです。
覚え方としては、(3弦を押さえているフレットの)5弦がルートであるセブンス(5度)と捉えると解りやすいです。
例:5~7フレットで押さえている場合は、4弦=ラ、3弦=ド、2弦=ファ♯。5弦5フレットがDのため、(レ)・ラ・ド・ファ♯なので、D7。という風に考える。
また、m7(♭5)の時にも使用できますので、5度と7度で使用できるフォームとも言えます。(キーGの時、D7(5度)とF♯m7(♭5)、など)

4弦がルートとなるセブンスフォーム(5度)のため、比較的理解しやすいフォームです。
ただ、こちらはm7(♭5)とは構成音が違うため、セブンスのみで使用することが多いです。

こちらも4弦がルートとなるセブンスフォーム(5度)ではありますが、3度の音が無い為に、マイナーセブンスにも応用ができるフォームです。
カッティングとしてはノーマルなマイナーが出てきた場合でも(音が他の楽器とぶつからない限り)使用できます。
△7(メジャーセブンス)

3本の弦を使用したハーフコードとしてよりも、1弦までを加えた4本弦での△7としてよく使用されるフォームです。
4弦がルート音となるため、非常にわかりやすいかと思います。
マイナー

こちらも4弦がルート音となるマイナーコード。
5~7フレットで考えた場合、4弦から順番にラ・ド・ミと並んでいる為、非常にわかりやすいのが特徴です。
キー=Cの時の6度マイナーとして捉えた場合、4度メジャーであるF△7でも使用できますし、F♯m7(♭5)でも使用できます。

こちらもマイナーコードですが、構成音が近い△7にも応用が出来る構成音となっています。
その他

5・6フレットで考えた場合、構成音が4弦からソ♯・ド・ミという独特な並びになるフォームです。
主にaug(オーギュメント・♯5)として使用することが多いですが、見かける機会はかなり少なめです。

こちらは、5・6フレットで考えたときに、構成音が4弦からソ・ド・ファとなるフォームです。
バレーコードのsus4の人さし指を除いたフォームとなっており、主にsus4の時に使用します。
★3弦ルートフォーム
3弦ルートフォームは、全部で14種類。
高音弦を使うため、1弦に(構成音の中で)どの音をもってきて目立たせるか、という所にスポットが当たります。
ミュートが難しい場合も多い為、場合によってはバレーコードのフォームをそのまま押さえ、そのうち1~3弦のみをハーフコードとして利用する形でもOKです。
メジャー

3弦がルート音となるメジャーフォームです。
4弦ルートのフォームと同じように、1度メジャーで使用できる=6度マイナーでも使用できるので、比較的目にする機会は多いです。

1・2フレットで使用した時はDm7となるフォーム。
しかし、1弦の音がルート音となっているメジャーコードとしても良く使用するフォームです。

こちらは、2・3フレットでDとして使用することが多いフォームです。
2弦の音がルート音となっており、sus4にも移行がしやすいフォームとなっています。
セブンス

3弦がルート音、1弦のトップノート(一番高い音)がセブンスの音となるフォームです。
ただ、特定のコード進行時(C→C△7→C7の時等)にちらっと見かける程度で、使用頻度はそこまで高くないかもしれません。
とはいえ、フレット上のルート音が判っている場合は非常に使いやすい上に、セブンス感を強く出せるフォームでもあるため、知っておいて損はないかと思います。

1・2フレットでD7として使用することが多い、ルート音がないセブンスフォームです。
ルート音の場所は2弦の右端となるために使い方は少しコツがいるので、他のセブンスフォームを優先的に使っても良いかもしれません。
マイナー

非常によく見かける、1弦がルート音となるマイナーフォームです。
バレーコードのマイナーフォームの下半分だけ、という考え方が判りやすいかもしれません。
3弦をルート音とする6(シックス)のコードでもあるので、メジャーコードの時でも(フレーズ内で)たまに見かけることがあります。

3弦がルート音となっていて、かつ3弦から1度・3度・5度と並んでいる為にわかりやすいマイナーコードです。
ただ指使い(コードチェンジ)が他のフォームに比べるとクセがあるため(ミュートもしにくい)、滑らかに使用するには少し練習が必要かもしれません。

1~3フレットで考えたときにDmとなるフォームで、2弦がルート音となっています。
こちらも先ほどのフォームと同じく、ハイフレットで使用するとミュートが少し難しいので、頑張って練習してみてくださいね。
その他

コードフォームとしてよりも、フレーズ内でよく見かけるフォーム。
3弦をルートとする△7として登場したり、マイナーコードのナインスとして使用されたりするという特徴があります(その場合のルート音は4弦の右端)。

こちらは3弦をルートとするaug(オーギュメント・♯5)として使用される事が多いフォーム。
かなり独特の音使いとなっているため、フレーズ内で見かけることが多いです。

こちらは2弦をルートとするsus4としてよく使用されるフォームです。
3弦ルートのメジャーコードと非常に相性が良いので、よくセットで出てきます。

こちらは1~3フレットでD7sus4として使用することが多い、ルートのない7sus4のフォームです。
そもそも多くは出てこない7sus4、その為にフォームのバリエーションは比較的少ないので、7sus4の為に覚えておいて損はないかと思います。
ルート音は2弦の右端になります。

3弦をルートとする、add9のフォームです。
3弦と2弦が全音でぶつかるため、独特の響きになるのが大きな特徴ですが、4~6弦を人さし指でミュートすることを考えると・・・

このオーソドックスなadd9フォームを3弦から弾く、という形の方がスムーズかもしれません。
いずれにせよ、add9のハーフコードフォームもバリエーションが少ないため、押さえておきたいところです。
ハーフコードの実際の使い方
では実際の譜例を基に、ハーフコードを用いたカッティングフレーズの作り方をご紹介していきます。
このようなコード進行が合ったら、どのように弾けばいいのでしょうか。↓
通常のバッキングであれば、ローコードを用いたり、バレーコードでカッティングをしたり、といった形が一般的です。
バレーコードについてはこちらをご覧ください↓
しかし、バンドの中でずっとバレーコードを鳴らしているとサウンドがモコモコしてしまうので、以下のコードフォームでカッティングをしていきます。

まず前半のコード4つ。
①はオーソドックスなメジャーフォームのAハーフコードですが、②はF♯mとして使用することが多いフォームを、構成音が似ているD△7として使用しています。(②の構成音はラド♯ファ♯)
③もオーソドックスなEハーフコード、④もオーソドックスなセブンスフォームでのC♯7となっています。
ポイントとしては、どのコードフォームでも4弦は薬指であるということ。
また、真ん中のフレットは中指、左端は人さし指と、完全に役割分担が出来ているため、バタつきを最小限に抑えることが出来ます。
③から④の流れの時は、薬・人さし指は動かさず、小指を2弦に乗せるだけというお手軽さも良いですね。
続いて後半の4つを見てみましょう。

⑤は、先ほど②でD△7として使用した物を、今度はF♯mとして流用しています。
⑥と⑦は共に人さし指セーハだけで鳴らすことが出来るフォームで、4フレットから7フレットにスライドさせるだけ。
この時のスライド音をあえてフレーズ内に使用することで、よりカッティングフレーズっぽいニュアンスとなります。
最後の⑧は、人セーハのフォームに中指か薬指を2弦に追加するだけ。
仮に、このEsus4の後にEが出てきた場合は、この2弦を外すだけです。
このように、ハーフコードを上手く活用することで、コードチェンジをよりスムーズなものにしつつ、サウンドを軽くすることが出来るのです。
この項目でご紹介したフォームはあくまで一例で、このパターン以外にも、同じコード進行内で使えるフォームはまだまだ沢山あります。
好みにあったパターンを見つけるのもハーフコードの楽しみの一つなので、是非、色んなパターンを探してみてくださいね。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
今回はエレキギターやアコギのフレーズとしてよく使用される、ハーフコードについて詳しく書いてみました。
バンドでの演奏でワンランク上を目指したい方や、伴奏が上手になりたい方には必須の技術となりますので、頑張って覚えてみてくださいね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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