ロックやパンク系の曲でよく見かけるパワーコード。
実は、とてもシンプルに出来ているコードなので、仕組みや押さえ方のコツを知ってしまえば誰でも簡単に演奏できるんです!
今回の記事では、各種パワーコード&よく似たomit3について、ギター講師である私Angler Ogiが徹底的に解説していきます!
↓【今回の記事はこんな内容です】↓
- パワーコードの仕組みを徹底的に解説!
- よく似たomit3との違いも解説!
- m7♭5、dim等の他、オン(分数)コードが登場したときの対処法もご紹介!
- 押さえ方/弾き方のコツに至るまで、このページで全て解ります!
パワーコードとは
パワーコードとは、コードのルート(主音)と5度の音を足したコードのこと。
例えば、Cコードの構成音はド・ミ・ソなので、Cのパワーコードであればド・ソの組み合わせ、という事になります。
面白いのはここから!
コードの構成音の中には、性格音と呼ばれるメジャーかマイナーかを決定づける音が存在するのですが、性格音は3度。
Cコード(ドミソ)の場合、性格音(3度)はミ。
そしてパワーコードは、このミの音を鳴らさない・・・ということは、
パワーコードには、メジャーもマイナーも関係ない!
という事が言えるのです!!
さらに、セブンスやマイナーセブンス/メジャーセブンスといったコードは、構成音が1度・3度・5度・7度と並ぶのですが、パワーコードはやっぱり1度&5度しか鳴らしません。
ということは、
パワーコードには、セブンスもマイナーセブンスも関係ない!
と言えてしまうのです・・・!
これはつまり、譜面上に並んでいるコード達の殆どを、同じような押さえ方で演奏出来てしまうということ。
エレキギターを始めたばかりの方に、うってつけのコードと言えます。
勿論例外はあり、
- セブンスやメジャーセブンスを鳴らす
- 1度&5度ではなく、1度&3度で押さえる
こういったフォームも使用することがあるものの、これらは(厳密には)パワーコードとは呼ばないので注意しましょう(呼ぶ人もいますが・・・)。
パワーコードとomit3との違いは??
パワーコードとよく間違えられるフォームとして、まず最初にomit3(オミットスリー/サード)というコードフォームが挙げられます。
オミットは除外するという意味であり、直訳すると「3度を除外する」という意味になるのですが・・・
ここで「アレ?」と思われたそこのアナタ!!
とても素晴らしいカンをしておられるか、音楽経験者ですね・・・!!?(笑)
そう、パワーコードも3度を除外したフォームになっているので、広義で言えばomit3と近い関係にあります。
ですが、
- パワーコードは1度と5度のみ、2音だけの構成
- omit3は「3度を除外」した全てのフォームで、一般的には3音の構成(ギターの場合)
このような決定的な違いがあるのです。
そのため、もしパワーコード(2音のみ)でサウンドに厚みが足りない場合は、omit3のフォームを利用して・・・
- 音の厚みをプラス(1度・5度に、オクターブ(8度)を追加)
- コードの響きをプラス(1度・5度に、セブンス7度)などを追加)
このようにバリエーションを付けることが出来るんです!
これにより、セブンスやm7(♭5)、dim等が出てきた時も(ある程度)対処が出来るようになります。
そのため基本的には、パワーコードだけで演奏できるものにomit3を少しだけ加えてコード展開を作っていくのが、ロック系サウンドの基本になります。
omit3についてまとめた記事も、是非併せてご覧くださいね!
複雑なコードはルートの1音だけで対処可能!?
パンク系の曲であれば、一切omit3を使わずにパワーコードだけで押し切ることが出来る曲も多くあります(モンゴル800の「小さな恋のうた」など)。
しかし、ここ数年人気のWANIMAなど、ややテクニカルなパンク/ロック系のバンドの場合、時折dim等のコードが登場し、困ってしまう事もあるのではないでしょうか。
そんな時は、omit3のコードフォームを使用しなくても、
コードのルート音のみを弾く
という荒ワザで乗り切ることも出来ます!
(実際多くのアーティストが行うアレンジ)
dimなどのコードが鳴っている時というのは、多くの場合メロディに特徴があり、ルート音&メロディだけでコードが成立するケースも多いのです。
そのため、ノーマルなコードはパワーコードで弾いておき、一瞬だけ登場するdimはルート音のみを弾き、その後パワーコードに戻す!
この手法で乗り切れるケースは意外と多いので、是非一度試してみてくださいね!!
パワーコードでオン(分数)コードはどうする?
譜面を見ていると、時折登場するのがオン(分数)コード。
当サイトでも、よく使われる分数コードのみに特化した記事を公開しています。↓
そもそもパワーコードは1度&5度しか鳴らさないコードですが、オン(分数)コードは構成上1度以外がベース音に来ているため、パワーコードの通常の理屈が通用しません。
例えば、
- Cの場合
ド(1度)がベース音で、後はミ(3度)・ソ(5度)が鳴れば成立 - C/E(ConE)の場合
ミ(3度)がベース音で、後はド(1度)とソ(5度)が鳴れば成立
このような事情があるため、通常のCの場合であれば、ただ3度を抜くだけでCのパワーコードが完成します。
しかし、C/Eの場合はそもそも3度がベース音に来ることが確定しているため、パワーコードの理屈である3度を抜いて2音だけにする、という事が通用しないのです。
そこで、C/Eのようなオンコードの場合は、通常表記してある音そのものを鳴らす、という手法を取ります。
つまり・・・!
- C/E→ミ(E)がベース音として指定、後はC(ド)を鳴らすので、ミ・ド。
- D/F♯→ファ(F)#がベース音と指定、後はD(レ)を鳴らすので、ファ♯・レ。
このように考えれば万事解決!
こういったコードを素早く押さえるためには、こちらを覚えてしまうと便利です!↓
これは、各弦それぞれのフレットがどの音なのかを表したもの。
例えば、6弦1フレットはFの音、5弦の3フレットはCの音、といった具合です。
これさえ覚えておけば、C♯は5弦4フレット・・・といったように、すぐに押さえるべき場所が判る、というわけですね!!
この表と、レギュラーチューニングの開放弦(6弦=E、5弦=A)を活用すれば、先ほど登場した2つのコードは・・・
- D/F#・・・6弦2フレット+5弦5フレット
- C/E・・・6弦開放+5弦3フレット
このような押さえ方になります。
1日1つ覚えれば、1週間程度で覚えられる計算ですので、是非覚えてみてくださいね!!
パワーコードフォームの実際の押さえ方
ここからは、実際にパワーコードの押さえ方について、写真を交えて見ていきましょう!
基本となるフォームですが、6弦ルート・5弦ルートとも全く同じフォームになります。
まずは6弦ルートフォーム。
こちらがダイアグラムになります。↓
このフォームを実際に押さえたところを正面から見ると、
このような形になっています。
一方、実際に弾いている側の目線で見ると・・・
演奏者側からはこのように見えています。
本来はこのように指の先端が白くなるほど力を入れず、ソフトに押さえるだけで十分なのですが、少々無理な体勢で撮影したため、悪しからず・・・。(苦笑)
上写真の状態で、既に4~1弦は人さし指でのミュートが完了した状態です。
人さし指はどうなっているかというと・・・。
このように、ネックに沿う形で緩やかにカーブ。
押さえるべき6弦は、指の先端よりもやや下部で押弦。
そして、指の先端部の白くなっている部分のみに力を入れる事で、6弦のみを押さえる事に成功しています。
そして、5弦ルートフォームのダイアグラムがこちら。↓
実際に押さえてみると、
このような形に。
6弦の時と比べて、1本下の弦を押さえています。
実際に弾いている側の目線で見てみると・・・。
このように、親指はやや外側を向き、かつ中・薬指で6弦をミュートしているのがお判りいただけるかと思います。
この中・薬指を外してみると・・・?
こんな感じ。
人さし指・小指とも、フレットのキワッキワを押さえているんです!
人さし指にズームしてみると・・・?
実は3~1弦だけでなく、人さし指の先端部で6弦をミュートしているのがお判りいただけるでしょうか。
こういった細かなミュートを行わないと、音を歪ませた時にノイズの原因となるため、パワーコードではミュートに細心の注意を払いましょう!
使用する指ですが、低い方の弦は(上写真のように)人さし指(先端よりやや下部)で確定。
この人さし指を指板上のCの場所におけばCのパワーコード、Dの場所に置けばDのパワーコード、となるのです。
もう一方の高い方の弦は、原則として小指で押さえます。
指が辛い場合は薬指を使用しても構わないのですが、
- 4弦ルートパワーコード(同じフォーム)
- パワーコードからオクターブ奏法に移行(よくあるフレーズ)
これらのケースでも、中・薬指を使用して5・6弦をミュートすることになる為、将来的な事を考えて、小指で慣れておくことをオススメします!
小指が辛いよーー!今はパワーコードしかやらないよー!
という場合は、とりあえず薬指で始めてみましょう!
開放弦を含むパワーコード2種
EとA(もしくはEmとAm)のパワーコードの場合は、6弦と5弦の開放弦をそのまま活用することになるため、少し特殊な押さえ方になります。
というのも、指の代わりにナットが働いてくれるため、押さえる場所が1か所だけでいいんです!
勿論、
- 6弦5フレットを利用したA(Am)
- 5弦7フレットを利用したE(Em)(音が高い)
これらを使用しても良いのですが、開放弦を使用した響きはとてもカッコイイので、是非マスターしていきましょう!
特に6弦開放を使用したEはギターが出せる最も低い音(コード)になるため、歪ませた時のヘヴィな感じは最高です。(笑)
まずは6弦ルート、Eのパワーコードがこちら。↓
見やすくするために中~小指をわざと畳んでいますが、通常は特に気にする必要はありません。
こちらを演奏者側の視点で見てみると・・・。
こんな感じで、5弦2フレットのみを人さし指の腹辺りで押弦しています。
一方、5弦開放を用いるAはこんな感じ。↓
中~小指と親指を開いて除けてみると・・・?
このように、4弦2フレットのみを押さえています。
演奏者側の視点では・・・。
このように、親指を6弦に乗せてミュート。
中指を除けて、人さし指にズームしてみると・・・?
このように、1~3弦は人さし指の腹でミュート出来るよう、第2関節辺りから真っすぐになっているんです。
5弦開放の音が必要なので、当然人さし指の先端は、5弦には触れていません。
はじめは少しコツが要りますが、慣れてしまえば普通にミュートも出来るようになるので、頑張ってみてくださいね!
覚えておくと便利なパワーコードの親戚フォーム
開放弦を利用したフォーム以外にも、覚えておくと便利なフォームを6種類ご紹介していきます!
オン(分数)コードフォーム
こちらのフォームは、通常のパワーコードフォームから人さし指を1フレット分ヘッド側にずらすだけ。
対応できるコードはオン(分数)コードで、例えば4・7フレットを押さえる E/G♯(EonG♯) の時には、
- 6弦側がベース音=G♯を担当
- 5弦側がコード音=Eを担当
このような構成に!
5弦フォーム/6弦フォームともに同じ押さえ方で、
・5弦→F#/A♯、G/B、A♭/C、A/C♯、B♭/D(A#/D)、B/D♯、C/E
これらのオン(分数)コードに対応できます。
ちなみに、3フレット5弦のみを押弦=C/E、4弦のみを押弦=A/Fになる事も、併せて覚えておきましょう!
sus4に対応するコードフォーム
こちらは、5弦をルートとするsus4(サスフォー)コードに対応できるフォームとなります。
パンク/ロック系の曲でもsus4は比較的よく見かけるので、是非覚えて対応したいところ。
ちなみに6弦でも同じ形で使用することは出来ますが、6弦だと音が低すぎる関係で濁ってしまうため、基本的には5弦フォームのみと考えておきましょう。
3度(メジャー)の音を用いたフォーム
通常は3度を除くのがパワーコードですが、時折メジャー感を演出するために、こちらの1度(5弦)と3度を鳴らすフォームが用いられます。
Cを鳴らしたいときは、5弦がCの音になるように押弦するため、
- 5弦=3フレット(薬指か中指)
- 4弦=2フレット(中指か人さし指)
という押さえ方になります。
歪みが強すぎると濁ってしまうため、クランチ(ボリュームを少し絞った状態)で使用すると良い感じになりますので、是非一度試してみてくださいね!
マイナーの3度を使用したフォームもたまに見かけますが、音が濁りやすいのでオススメできません。
dimやm7(♭5)に対応するフォーム
ポップスの曲で時折登場するdimやm7(♭5)。
通常、このような4声のコードが登場する場合はきちんと構成音を鳴らしたいところではありますが、パワーコードで押し切る場合は、↑のようなフォームを使用します。
どちらの場合も、低音弦側にコードのルート音が来るように押さえましょう。
ただどちらも音が濁りやすいため、使用する際は「ルート音のみの単音がいいのか、フォームの方がいいのか」を比べてみてくださいね。
パワーコードの押さえ方とコードチェンジのコツ
基本的な押さえ方が全コード同じであるパワーコードは、コードチェンジも独特。
と言っても難しいわけではなく、左手のフォームはそのままに、左右(もしくは上下)の任意のフレットに移動させるだけというお手軽さです。
その際にポイントとなるのは、左手の親指。
パワーコードを押さえるときは、親指をグッと押すようにすれば、人・小指は自動的に指板に押し付けられる、という形です。
フォロー的に人・小指も指の先端よりやや下部にほんのわずかな力を加えれば、綺麗に鳴らす事が出来るはず。
下の写真をご覧ください。↓
親指の力を加える方向は赤の矢印。
ポイントは、人さし指の力をこめる方向から、ほんの少しだけヘッド側にずらすことです。
人さし指の力を加える方向は緑の矢印。
親指に向かう様に力をこめると下の弦を押さえてしまう可能性があるので注意しましょう。
これで、人さし指と親指でネックをサンドするイメージにすれば、人さし指側は完了。
続いて黄色囲みは、小指の力を加える場所。
弦に設置している点ではなく、爪の裏の面で押さえるイメージです。
最後に、青丸の中・薬指。
5・6弦ルートに関わらず、自由に曲げ伸ばしできるくらい、力を抜けるようにしましょう。
そうすれば、ミュートの時もフッと楽に触れる事が出来ますし、コードチェンジの時に力むこともありません。
この状態が出来上がっていれば、後はフレット/弦移動を問わず・・・
- 親指の力を抜く
- 任意のフレットまで、左腕全体を抜くイメージで、ネックの上を滑らせる
- 人さし指で押さえるフレットを判断し、親指に軽く力を入れて押弦
これで楽にコードチェンジを行うことが出来ます。
大事なのは、手首から先だけで移動するのではなく、肩から先の腕全体でコードチェンジを行うということ。
こうすることにより、無駄な力を省くことが出来るため、長時間の演奏でも疲れることなく長続きさせることが出来るのです!!
また、移動先のコードがある場所を先に見ておき、人さし指を置くフレットでコードを判断するのも見逃せないポイント。
例えば、立ち幅跳びをする時に、目標地点を見ながら跳ぶのと同じで、移動先を予め確認しておく事で、コードミスは激減します。
フォームが同じであるパワーコードの場合、左小指を気にしておく必要は特にありません。
フォームをカチッと固めたら、そのまま人さし指主体でコード(フレット)を追いかけていきましょう!
ネックの角度にも注目!
指板を見ながらコードチェンジしたい!という意識により、ネックを寝かしてしまう初心者の方が多くおられます。↓
こちらは演奏者視点で見た、ギターのネック。
これくらい傾いた状態だと、確かに指板は見やすいですが、左手首が大きく曲がってしまうためにコードチェンジの妨げになってしまいます。
どうしても指板を確認したい!という場合は、これくらいの角度感が限界だと思って下さいね。↓
実際にはポジションマークが見えるかどうかという角度で演奏しますが、弦が上写真ぐらいのバランスで見えるくらいであれば大丈夫です。
ヘッドを持ち上げる/ネックを斜め前に突き出すといった事でもコードは押さえやすくなるので、左手首が痛くならない角度で練習してみてくださいね。
パワーコードを使用する時の右手
左手でパワーコードを綺麗に押さえても、右手の使い方がアコギのコード弾きと同じような角度では、パワーコードは綺麗に鳴りません。
そもそも弦を2本しか鳴らしていないため、必要以上に右手を振る必要が無いのです。
私の場合、基本的なフォームは↑のような形。
ポイントとしては、以下の3点です。
- 右手首がほぼまっすぐになるように配置
- 親指をほんの少し曲げ、ピックを持つ指にはほぼ力を入れない
- 親指を軽く押すように、ピックの角でザクザク切るようなイメージでピッキング
これらを意識するだけで、音が変わってくるはずです。
ブリッジミュートの場合
パワーコードの演奏では、実音(実際に鳴っている音)以外に「ズンズン」という音色を鳴らす「ブリッジミュート」という奏法をよく使用します。
ギターのブリッジ部に右手の腹(掌の小指の下側)を触れさせて弦を弾く事により、弦の振幅に制限を掛けて、特有の音を産み出す奏法です。
ブリッジミュートのやり方ですが、通常の時よりももう少し親指を曲げて構えます。↓
しっかりミュートが出来たら、(指で回すタイプの)カギを開閉するようなイメージを持ちつつ、小さく右前腕部を回すようにピッキングします。
6弦を弾くときも、基本的には同じ。↓
親指側の手首をほんの少しだけ持ち上げてやることで、6弦に対応。
つまり私の場合、5弦付近で最も力が抜ける状態を作り、6弦は持ち上げる・4弦は下げるイメージでピッキングするのです。
とにかく脱力しつつコンパクトに右手を使うのが大事になるので、鏡を見ながらフォームチェックをしたりして、無理のない動きを心がけましょう!
厳密にはもう少し細かい場所(右肩から下の関節全てと右の肩甲骨辺り)をあちこち意識しつつピッキングしますが、まずは脱力とコンパクトという事に意識を置いてみてください!
パワーコードについての纏め
普段ギター講師として、多くの皆さまにお伝えしているパワーコードの理屈を凝縮してみた今回の記事、いかがでしたでしょうか。
初心者にオススメの演奏法として登場するパワーコードですが、初めてトライする時はなんだって難しいもの。
上手くいかない!と悩んでおられる皆様のお役に立てていれば幸いです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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