こんにちは、Angler Ogiです。
暑さのピークは完全に過ぎ去り、いよいよトンボ家の秋シーズンが近づいてまいりました。
秋といえば中型のヤンマとアカネ属が活発に活動するシーズンですが、今回ご紹介するのは、秋を代表する大型ヤンマ・ルリボシヤンマです。
何故今回はルリボシヤンマの紹介なのか?といいますと。
- 7月下旬頃から羽化が始まり、毎年9月半ばに発生のピークを迎える。
- 雄は縄張り飛翔中によくホバリングするため、撮影を楽しみやすい。
- 雄も雌も、独特の渋い色味が美しい。
- サイズが大型で、見ごたえバッチリ!
- オオルリボシヤンマと同じ産地で見られることがある。
前回のトンボ記事でオオルリボシヤンマの観察方法について特集しましたが、同じ仲間ということで、是非!ルリボシヤンマにもご注目頂きたいと考えたのです。
現在兵庫県ではCランク(準絶滅危惧種)である貴重種ですが、探せばきっと産地は見つかるはず!
ルリボシヤンマを通じて、トンボが棲息できる環境について考えることが出来たらと思いますし、情熱の限り、ルリボシヤンマを語りつくそうと思います!!。
↓今回の記事はこんな内容です↓
- ルリボシヤンマの生態を詳しく解説!
- 狙うべき場所、 捕獲する際のポイント等を考察!
- 貴重な産卵活動の様子を詳しくご紹介!
ルリボシヤンマの生態は?どんなトンボ?
ルリボシヤンマは、体長が68mm~90mmになる大型のトンボ。 近畿地方では80mm程度の個体が多いように思います。
近畿地方での卵期は180日前後、幼虫期は400日程度と、オオルリボシヤンマとほぼ同じ。 羽化するまでおよそ2年かかります(2年1世代型)。
近畿地方にはそれなりに産地があるようですが、兵庫県では主に高標高地に出向かないと確認できない種で、私はいつも県中部~北部にまで出向いて観察しています。
いまのところはまだ姫路市内で産地を見つけていませんし、四国などでは本当にごく一部でしか確認されていないようです。
発生自体は7月頃から始まっている、と「近畿のトンボ図鑑」にありますが、この頃は水域にやってくることはほぼなく、目にする機会はありません。
山間部の高所を飛翔しているところを時折見かける程度なので、捕獲や観察はオオルリボシヤンマよりも難しいと思われます。
もし未成熟のルリボシヤンマを観察する場合は、ヤゴを飼育して羽化させるのが最も確実性が高い方法のではないでしょうか。
こちらは親友Takaから譲り受けた写真。Takaの自宅のビオトープ池で長らく飼育されていた個体が羽化した際の写真です。
羽化は深夜にひっそりと始まり、かなり時間をかけて行われたとの事でした。
翅を開いた時は水色っぽい色合いがかなり強かったそうで、成熟個体とは随分雰囲気が違います。
しかし、翅を広げた際のサイズ感はやはり圧巻。ビオトープ内の栄養状態が良かったためか、この個体はかなり大きかったようです。
ルリボシヤンマの名前の由来
さて、ルリボシヤンマの名前の由来はというと、
この美しい背面。オオルリボシヤンマと同様に、背中に瑠璃色の星をちらしたようなカラーリングとなっています。
こちらは雌。雄よりもかなり腹部が太くがっしりしていて、複眼や腹部の色は黄色~黄緑水色がかっており、非常に美しいトンボです。
北海道のルリボシヤンマの雌には、腹部の斑紋が青っぽい「青色型」も存在するようです。
ルリボシヤンマの生息環境
オオルリボシヤンマと同じく、樹林に囲まれている事が必須条件。基本的には小さめの池を好むようですが、高層湿原などにも生息しています。
ちなみに池で本種を発見できた時は、どの場所も「山中にぽっかり存在する池」といった感じでした。
さらに、浮葉植物が繁茂していて、やや閉鎖的な環境が多かったように思います。
こちらは、ルリボシヤンマとオオルリボシヤンマが混生している岡山県の産地。
場所により、開けた場所と閉鎖的環境とを備えているのですが、最盛期になると「そんな事はおかまいなし」と言わんばかりに、両種がケンカしているシーンを何度も目撃しました。
オオルリボシヤンマの記事でも書きましたが、オオルリがいる池=ルリボシがいる可能性はあります。
しかし、兵庫県の産地ではルリボシがいる池=オオルリがいる池、という図式は成り立たないのかもしれません。
こちらは兵庫県のルリボシヤンマの産地。
この場所ではルリボシヤンマの産卵を観察しており(下記で紹介)、かつヤゴも多数確認しましたが (目視できるレベル) 、オオルリボシヤンマは成虫もヤゴも確認できませんでした。
環境としてはあまりに閉鎖的で(この場所を見つけたのも「親友のカン」と偶然でした)、オオルリボシが好む環境とは全く違っていたのが面白いところです。
ルリボシヤンマを観察できる時間帯
私がルリボシヤンマを観察する場合、季節は9月頭~下旬。時刻は10時前後と、14~17時頃を狙います。
雄の縄張り飛翔は午前中から活発に見られますし、14時過ぎであればオオルリボシヤンマも同時に観察できたりします。
しかし、(後述しますが)産卵を観察するのはやや難易度が高めなので、夕方まで粘る気持ちが大事かもしれません。
近縁種オオルリボシヤンマとの違い
簡単な見分け方としては、上写真のように、胸部の模様が挙げられます。
下に出っ張っているのがオオルリ(かつ青っぽい色合いが強い)、スパっと切ったような形になっているのがルリボシです。
その他の見分け方等、オオルリボシヤンマのこちらのページに詳しく書いておりますので、是非そちらをご覧いただければと思います!
ルリボシヤンマの産卵活動
ルリボシヤンマはオオルリボシヤンマと違い、雌が水域にやってくると即刻雄に連れ去られていくことが非常に多い種です。
基本的に雄はかなり長い時間、水域の上をパトロールしているのですが、雌が来るのは夕方のほんのひと時。
その瞬間まで、ひたすら待ち続けているという印象を受けました。
観察している方としては、被写体に困ることが無いので楽しい時間ですが、ひっきりなしに縄張り争いが起こって別個体に入れ替わる為、とても大変な世界であることを感じさせられます。
そうこうしていると、15時~16時くらいから雌が水域にやってくるのですが、雌が見えた瞬間、雄は雌に襲い掛かります!!
オオルリボシヤンマの場合は、雄が中々雌にアタックできずにいますが、ルリボシヤンマの場合は、雌が来たら即刻連れ去る、というのがルールのようです。
こういった理由からも、産卵観察が難しい、と私は感じています。
運が良ければ近くに静止し、交尾態を観察できることもあるようですが、この日は雄の個体がかなり多い日だったせいか、皆遠くへ飛び去ってしまいました。
水域にはまたすぐに別の雄がきて、縄張り飛翔を始めます。
この時(10月頭)は、アタリが薄暗くなる16時半頃まで縄張り飛翔をやっていました。
こうして交尾を終えた雌は、単独でひっそりと水域にやってきます。
薄暗い山中にある小さな池で、辺りがほとんど見えなくなってくる17時頃に、産卵にやってきた雌を発見!
この時間になると雄はおらず、雌が静かに産卵できるのかもしれません。
水面に落ちた枯れ枝や植物を丹念に見て回り、気に入った場所があると降りたって静止産卵を行っていきます。
ちなみにこの日、この場所の気温は14度(産卵終了時は12度)。高標高地とはいえ、まだ9月頭だったために夏の装備だった私は、寒さで大変な思いをしました。(苦笑)
40分ほどで産卵は終わり、この雌はそそくさと飛び去って行きました。
水域にやってくる雌はかなりの数を確認していますが、必ずと言っていいほど雄に連れ去られるため、産卵が観察できたらラッキーというレベルかもしれません・・・。上写真の産卵場所は、昨年訪れた際に干上がってしまっていたので、また新しい産地を探せたらと思います・・・。
このような感じで産卵を行っている雌ですが、集中している為か(寒さのせいか)、動きはかなり重ためです。
最初の方にも書きましたが、ルリボシヤンマは今兵庫県Cランクの準絶滅危惧種で、かつ、やや特殊な環境を好むため、棲息場所がかなり限られてきています。
もし産卵している雌を見かけたら、捕獲などはせず、優しく見守ってあげてくださいね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は兵庫県の貴重種であるルリボシヤンマについて、詳しく書いてみました。
9月に入れば発見できるチャンスも増えますので、皆さまも是非、探してみてくださいね!!
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