サラサヤンマの生態や観察方法をご紹介!

この記事は約8分で読めます。

※当ブログの記事にはプロモーションが含まれています。

こんにちは、トンボを本格的に追いかけて約10年、Angler Ogiです。

今年の冬は暖冬だった割に気温の上昇が遅れ、その影響で春トンボの発生は少し遅れ気味。

しかし5月に入って一気に気温が上昇すると、あっという間に初夏のトンボたちが発生を開始。
サラサヤンマも最盛期は6月なので、シーズンイン間近です。

サラサヤンマはどんなトンボかというと・・・!↓

サラサヤンマについてピックアップ!↓

  • 4月末から羽化が始まり、近畿地方では7月頭頃まで発生!
  • 産卵は午後に行われますが、昼間に見られることも!
  • 縄張り飛翔する性質が強く、よくホバリング。撮影が楽しいトンボです。

兵庫県で産地を見つけるのは結構大変ですが、一度見つけたらその場所で多数見られる可能性が高いので、是非見つけてみたいところ。

という事で今回の記事では、私も大好きなトンボであるサラサヤンマについて語っていこうと思います!

↓今回の記事はこんな内容です!↓

  • サラサヤンマの生態を詳しく解説!
  • 狙うべき場所、 観察する際のポイント等を考察!
  • ヤゴは幻!?発見し辛いとされるヤゴの棲息場所とは!?
  • 産卵の様子や、雄の縄張り飛翔(ホバリング)の様子もご紹介!

サラサヤンマってどんなトンボ?

サラサヤンマは、北海道から九州地方まで、比較的幅広く棲息するヤンマ科のトンボ。

沖縄地方には、近似種であるオキナワサラサヤンマが棲息しています。

体長は57mm~68mmで、トンボとしては中型。
ヤンマ科の中ではかなり小さめな部類になります。

近畿地方では5月頭に羽化が活発になり、成虫が飛び始めるのは大体5月下旬頃から。
6月の最初の頃にピークを迎え、6月いっぱいは普通に観察できます。

稀に高標高の場所でも見かける事がありますが(過去に標高800mほどのヒラサナエの産地近くで目撃)、基本的には低地(山裾など)に棲息。

私が住む兵庫県では絶滅危惧Ⅱ類(Bランク)に指定されているほどかなりレアなトンボですが(Ⅰ類に指定されている県もある)、隣県の岡山は特に指定なし。

いるところ・いないところがハッキリしている印象があります。

ちなみにサラサは漢字で書くと「更紗」となるのですが、これはサラサヤンマの模様が(着物などに使われる)更紗模様に似ている事から名付けられています。

特に背面から観察すると、小さな△の模様が多数あり、非常に美しいトンボですね!

腹部第二節辺りの模様が特に面白い。

サラサヤンマの棲息環境

サラサヤンマの棲息環境はやや特殊。
好むとされている環境は、

  • 丘陵地や山地にある乾湿地
  • 周囲が樹林に囲まれている場所

大別するとこの二点ですが、乾湿地というのが非常に難しい環境なのです。

「湿地」という字面から、沼地のような場所を連想する方が多いと思うのですが・・・

サラサヤンマが飛び回る岡山東部のポイント。

実際にはこのように「ただの草むらのように見える場所」が乾湿地の実態。

上の画像ではわかりにくいですが、実は若干地面が湿っており、一部ぬかるんだ泥上の地面になっている場所があるのです。

こちらは兵庫県中部の産地。

元々池だった場所であったり、湿地が干上がり気味になって草がワサワサ生えているような場所は泥上の地面になっている事が多く、サラサヤンマが好む環境となっています。

Ogi
Ogi

湿地周辺のほか、「地図で見たら池なのに、実際に行ってみたらただの草むらだった」・・・なんて場所が狙い目だったりします。

所々に湿生植物が存在していたり、湿った倒木(産卵床になる)などがあればさらにグッド。

この環境はネアカヨシヤンマが好む環境(遷移途中の湿地等)と少しだけ似ており、私が把握しているサラヤンマの産地6か所のうち、3か所でネアカヨシヤンマも確認しています。

スポンサーリンク

サラサヤンマの生態

サラサヤンマの雄は比較的狭めの縄張りを持ち、その周辺を定期的にホバリングを交えてパトロール。

縄張りの広さは棲息地の環境や個体密度によりますが、私が観察してきた限りでは、1m四方程度~2帖くらいの広さでした。

また、地面の環境が整っていれば日向・日陰は特に問わないようですが、縄張りの一部が常に日陰になっているような場所が多いように感じます。

サラサヤンマ飛翔写真。兵庫県北部にて。
パトロール中のサラサヤンマ♂。
とにかくよくホバリングする。

しばらくウロウロして雌が来ていなければ、すぐ近くにある植物や木の枝等に(縄張りを見張れる角度で)静止します。

静止した瞬間は体が斜め向き。
白矢印の方向がこの個体の縄張り。

飛翔中・休止中問わず、縄張り内に入ってきたヨソモノのトンボや同種の雄に対してはかなり攻撃的な意思を示し、時折絡まりあって地面に墜落する個体もいるほど。

追い払った(もしくは追い払われた)後は周辺を警戒しながら飛び回りつつ、再度縄張りを見張るような角度で静止、という事を繰り返します。

とにかく長時間ホバリングをするので(時に10秒近く!)、撮影を楽しむにはピッタリのトンボですね!

方向転換の直前。顔を少し捻っている。
驚かさなければ長時間撮影を楽しめる。
こんなドアップも撮影可能!(ズームレンズでノートリミング)
スポンサーリンク

サラサヤンマが見られる時間帯

多くのヤンマは早朝や夕方の「黄昏時」に活発に活動しますが、サラサヤンマは初夏に登場するトンボであるためか、黄昏飛翔性は強くありません。

午前中(8時~9時頃)は縄張り近くの草むらの上や、すぐ近くにある水場周辺(水路の横など)で摂食飛翔を行っている姿を目にします。

そして気温が上昇し始める10時過ぎくらいから、雌がやってくるのを待つために縄張り飛翔を開始。

活発に飛翔しているのは10時~12時頃14時~15時頃ですが、過去に兵庫県北部の多産地を訪れた時は、真昼間でも普通に飛び回っていました。

13時半頃、休止中の個体。大抵は縄張りの真上に当たる林縁。

時折黄色みが目立つ未成熟個体も、縄張りを持ってホバリングしています(兵庫県では5月末頃)。

未成熟個体は複眼下部が茶色っぽく、体もかなり黄色が目立つ。

サラサヤンマの産卵活動

先ほどの項目で雄がよく見られる時間帯について触れましたが、サラサヤンマの雌は昼前後、よく産卵にやってきます。

産地によっては15時や16時頃の夕方に産卵が見られることもありますが、私がよく行く観察場所では大抵12時前~14時過ぎがピーク

交尾は雄の縄張り近くの樹上で行われるのですが、多産地でタイミングが合えば、連結態になっている状態も確認することが出来ます。

2013年6月17日、11:19に撮影。

こうして交尾を終えた雌は、雄が縄張りを張るような場所にひっそりと降り立ち、盛り上がった泥や湿った倒木などに産卵を開始。

2013年5月25日、兵庫県北部の多産地にて14時過ぎに撮影。
水気はないが、泥は湿っている。2013年6月17日、11:54に撮影。

基本的には湿り気のある場所に好んで産卵しますが、水気の全くない所で産卵することも。

2013年5月25日、日向の泥に産卵。
2014年5月28日、13:43に撮影。倒木に産卵するまだ若い雌。
上写真と同じ個体。湿った苔に産卵。

サラサヤンマは産卵場所をコロコロ変えることが多いのですが、これは乾湿地という特殊な環境に棲息するが故、少しでもヤゴ達が生き残る確率を上げるためと考えられます。

産卵している時間は、早い個体で数分。
中には30分近く産卵を続けた個体もいたので、この辺りは個体差があるようです。

産卵を終えた雌はそそくさとその場を立ち去り、林の中へ消えていきますが、稀に16時~17時頃、産卵場所の近くで(雄に混じって)摂食飛翔を行っている事も。

もし長時間観察することが可能な方は、探してみてくださいね!

Ogi
Ogi

纏めると、5月末~6月頭の10時~14時頃に乾湿地を訪れれば、雄も雌も見られる可能性が高い!ということですね。

サラサヤンマのヤゴは幻のヤゴ!?

私がトンボ観察を始めた2010年ごろは、サラサヤンマのヤゴを捕まえた!という報告はほとんどありませんでした。

水がほぼない乾湿地という特殊環境のもと、雄が縄張りを張っていたり、雌が産卵した場所周辺をどれだけ探し回っても、ヤゴは見つからなかったのです。

Ogi
Ogi

ヤゴ=水中にいる生き物!(ムカシトンボ等上陸幼虫を除く)という固定概念が、発見を遅らせていたようです。

しかし、特にヤゴが好きだった親友TAKAは、その情熱でサラサヤンマのヤゴをあちこちで確認!!

2012年4月27日に見せてもらったサラサヤンマの終齢幼虫。

こちらがサラサヤンマのヤゴ。
実に特徴的な見た目をしています。

TAKA曰く、

「終齢ヤゴは殆どトンボみたいなものなので、本来ヤゴが棲息している場所から離れた場所(羽化場所近く)で見つかる。なので本当のヤゴとは言えない!」

とのこと。
やはり若いヤゴを捕まえてこそ、本当に「サラサヤンマのヤゴを捕獲したと言える!」との事で・・・。

2013年4月20日に発見した若いサラサヤンマのヤゴ。

本当に目の前で捕まえて見せてくれた時は、衝撃で言葉が出ませんでした。
(同じ場所で探した私は1頭も見つけられず)

TAKAが教えてくれたサラサヤンマのヤゴの見つけ方は以下の通り。

  • 雌が産卵した場所周辺で、僅かに窪地になっている場所を探す
  • 積み重なっている落ち葉を一枚ずつ剥がしていき、裏面を確認
  • 居なければ、溜まっている枯れ葉を全て確認

50㎝四方くらいの窪地があり、そこに僅かながら(数ミリでも)水が溜まっていれば、発見できる可能性はかなり高くなるとのこと。

とはいえ、10年前までは幻のヤゴとまで言われていたサラサヤンマですから、数時間探しても一切見つからない!なんてこともザラ。
実際私は、未だに1頭も見つけられていません。(苦笑)

それでもTAKAはこの方法で、成虫を確認した殆どの場所でヤゴを確認していますから、間違いなく見つけられるはず。

ヤゴを是非見てみたい!という方は、頑張って挑戦してみてくださいね。

スポンサーリンク

サラサヤンマについてのまとめ

初夏に見られるサラサヤンマについて、個人的考察を交えながら詳しく書いてみた今回の記事、いかがでしたでしょうか。

これからいよいよ本格的なトンボシーズンに入りますので、コロナウイルスが収束したら、熱中症・害虫対策をしっかり行って捜索を楽しみましょう!!

Ogi
Ogi

私は標本否定派ではありませんが、観察したトンボ・ヤゴは出来る限り優しくリリースしてあげてくださいね。

コメント

  1. ぷち より:

    いつもブログ拝見させて頂いてます。
    いつも気になるのですがこのような乾湿地や小規模な池、植生の豊かな池などのスポットはどのようにして見つけているのでしょうか??

    • Angler Ogi Angler Ogi より:

      >ぷち様

      当サイトへのご訪問とコメント、ありがとうございます!

      現在ブログに掲載しているポイントは、自分で見つけたポイントの他、
      親友TAKAや岡山の友人に教えてもらったポイントも多くあります。

      基本的な探し方は、私自身も友人たちも同じ方法でして、

      ①グーグルマップで航空写真を確認してから試しに行ってみる
      ②航空写真を見た時に怪しい場所(地図では池なのに草むらになっているなど)を虱潰しにあたる
      ③元々①で見つけた池の奥が湿地になっていたりする
      ④池が連なっている場所を見つけたら、その周囲(半径500m程度)をひたすら歩きまわる(時に藪こぎ)
      ⑤仮に訪れた時に目当てのトンボを発見できなくとも、「ここは!」と思ったなら、季節や時間帯を変えて何度も訪れる

      こんな感じでしょうか。
      とにかくグーグルマップを見て訪れてみるという動きが大事になります。
      勿論空振りもありますが、最後はカンが頼りになりますので、
      頑張って探してみてくださいね!

      Angler Ogi

  2. 中山 正 より:

    美しいとんぼ写真に、貴方のトンボに対する愛情を感じて、楽しく拝見させていただいています。貴方の写真に憧れて、当方今年、2022年6月から、トンボ写真撮影に挑戦している67歳です。特に貴方の飛翔写真の美しさは別格です。カメラの設定が本を読んでもよくわかりません。静止写真はそれなりに撮れますが、飛翔写真をどのように撮ったらいいのかわかりません。ご指導いただけると幸いです。よろしくお願い致します。

    • Angler Ogi Angler Ogi より:

      >中山様

      当ブログへのご訪問&コメント、ありがとうございます!
      多忙で返信が遅れてしまい申し訳ありません。(^^;)

      飛翔写真についてお困りとの事ですが、正直私もマトモな飛翔写真が撮れ始めたのは
      デジイチを使い始めて一年程度が経過してからでした。
      カメラの設定は季節や天候により大きく変わるので、「コレ!」と言った設定はありませんが、
      以下の項目を大切にしております。
      参考になれば幸いです。

      1、シャッタースピードは可能な限り速く
      →トンボは素早く動き回る生き物ですので、晴天&ストロボ不使用であれば、少なくとも1/1200は欲しいです。
      1/2000程度で撮影できる晴天時であれば、後は手動でピントを調節しつつ、ひたすらシャッターを切ります。

      2、ストロボとF値を上手く使う
      →この記事のサラサ写真の場合、シャッタースピードは1/200(カメラの上限)にして、ストロボ(光量普通)を使用しています。
      また、F値の値が大きくなればなるほどピントが合う距離が長く稼げますので(被写界深度という言葉で表します)、
      私はF値については(基本として)8~10程度を目安にしています。

      3、ISO数値と画像サイズについて
      →ISOは数値が大きくなればなるほど画質が荒くなるため、私は320を基本設定とし、
      200~500までの数値で撮影を行っています。
      また、画像サイズも小さいもので撮影すると荒くなってしまうので、やや大きめサイズのMという数値で(1枚3.2メガ程度)
      撮影を行い、適宜トリミングを行っています。

      4、レンズについて
      →私はマクロレンズを持っていませんので、トンボの飛翔写真は全てズームレンズで撮影しております。
      (NIKON純正の55-300mm、当時の価格で3万円程度のレンズです)
      ズームレンズで出来る限りズームアップすることで、背景が多少ボケやすくなりますし、
      距離を取って撮影するためにストロボの光が拡散、結果として丁度いい明るさになります。
      ただ、ピントあわせはよりシビアになります。

      5、トンボの動きの把握
      →サラサやカトリ、オオルリやルリボシなら適度にホバリングする個体がいますし、
      ギンやクロギンはある程度周回するコースが決まっています。
      そのため、発見した直後はその個体の行動パターンを観察し、どこでホバるのか、
      どのルートを通るのかを確認してから撮影ポイントを決めます。

      これらの項目を意識しつつ、あとはどれだけ暑くてもひたすら根気よくシャッターを切り続ければ、
      200~300枚のうち数枚は綺麗な写真が撮れるのではないでしょうか。(苦笑)
      ピント合わせについては慣れの部分が大きいので、ポイントに足しげく通い、
      頑張って撮影練習をしてみてくださいね!

      熱中症にはご注意を・・・!

      Angler Ogi

タイトルとURLをコピーしました